は銀時の問いに、ふと視線を泳がせた
その視線が、チヒロとふざけながら短冊を拾い集める万里で止まった
: 私は好きな人と一緒に過ごしたいって書いただけ。
銀時 : へーぇ。にしちゃぁ直球じゃねーかよ?
: そう?私いっつも直球勝負のつもりだけど?
銀時 : ま、そういう事にしといてやるよ。はなんて書いたんだ?
銀時はに声をかけながら、の元を去った
と銀時がふざけ合う姿を見ながら、視線を万里に戻そうと思った時だった
すぐ近くから声がした
万里 : 誰、探してるのー?ちゃん
: ま、万里さん?!驚くじゃないですか、もう!
万里 : えー?そんなに驚く訳?オニーサンちょっと傷ついちゃうなぁ
: あ、いや、ほら、さっきまで短冊拾っていたじゃないですか、それで・・・
万里 : なんだ、見てたの?それとも、チヒロを見てたのかな?
: ・・・万里さんのこと、見てたんです
万里 : よしよし、よく言えたね〜ご褒美
チヒロ: ・・・ダメ・・・さん独り占めはダメ・・・
万里 : わぁ!!ち、チヒロか・・・驚かすなって
チヒロは万里との間に割り込む。それを苦笑して見る二人がいた
炎樹と彬だった。少し離れた所から一部始終みていた
炎樹 : なー、アレ。どう見てもチヒロがお邪魔虫って感じしねぇ?
彬 : んー言われてみれば。
でも仕方ないだろう?チヒロは姫から離れたくないらしいからね
炎樹 : でもよー今日は七夕で・・・ん?あれ、の短冊じゃねぇ?
彬 : ホントだね、あの文字は姫に違いない。
「万里さんと一緒にいたい」
炎樹 : 直球〜!万里ご指名だぜ?
彬 : 姫らしいねえ。
二人はまた達3人をみた。
チヒロを真ん中に、万里とが時々視線を絡ませる。
それをチヒロが敏感に察知してに抱きつく
万里を見ていると、このまま席を立ってしまいそうだった
炎樹 : な、このままじゃ、ヤバくねぇ?俺たちで万里と、抜け出させてやろうぜ
彬 : しかしねぇ・・・万里くんの真意を知らないまま事を進めてもいいのだろうか?
炎樹 : あの顔みただろ!?万里だっての事が好きなんだって!!
彬 : ・・・好きには違いないだろうが・・・
彬は炎樹の想いが判った
しかし、万里は今のこの状況を崩してまで、を手に入れたいと願っているのか
万里が悩んで居るように彬には見えていた
ここから万里と、二人っきりで抜け出す事は出来るが、その後チヒロと万里との仲は?
万里が一番気にしてるのはそこではないのか?彬は考えながら、万里を見ていた
彬 : 私に任せてくれないだろうか?少々、万里くんに尋ねておきたい事がある
炎樹 : いいけどよー、あんまり長引くと
彬 : 大丈夫。きっと彦星は織り姫に会いに行く運命なのだよ
炎樹 : 運命、ねぇ・・・
彬はにっこりと炎樹に笑うと、優雅にターンをして万里達のテーブルに向かった
迷うことなく、万里に声をかける彬。
そしてその行為を楽しげに見る炎樹
彬 : ちょっとイイかな?お楽しみ中、申し訳ないが・・・万里くんをお借りするよ?
チヒロ: ・・・返さなくていい・・・
: もう、そんな事言わないの。行ってらっしゃい、万里さん
万里 : 仕方ないな、行ってくるからチヒロ、抜け駆けするなよ?
チヒロ: ・・・多分・・・
彬 : 申し訳ないね、姫。すぐに返すよ。では万里くんこちらに来てくれないか
苦笑しながらも彬に連れられていく万里
彬はの短冊の下まで、万里を連れていった
彬 : あれが読めるかな?
万里 : あ、あれって・・・マジッスか?
炎樹 : なぁなぁ、万里はなんて書いたんだよ!みーせーろーよ!
万里 : ちょ、ちょっと待てって炎樹!あーーもう
胸ポケットに折りたたまれて入れられた短冊を炎樹はめざとく見つけた
素早くそれを手に取ると、広げ目で文字を追う。
彬も横からそれを見た
炎樹 : なぁ・・・なんで「さんと」で止まってる訳?
彬 : 書けなかった、と言う事だね
万里 : 彬さんの言うとおりっす・・・
その先を願ったらなんだかもう、歯止めが利かなくなりそうで
万里が力無く笑う
いつものホストの顔ではなく、それはただの男が照れくさそうにしてるだけだった
そんな万里の肩を炎樹が力強く掴んだ
万里 : え、炎樹ぅ?!
炎樹 : 任せろ!俺たちに任せろよ!!大丈夫、今夜は運命なんだってよ!
万里 : え?
彬 : そう、彦星は織り姫の所に行く運命なんだよ。
万里 : は、はぁ・・・運命、ねぇ
万里はの短冊を見上げる
少し手を伸ばして、そっとその紙を手に取る。
もう一度、その文字を見る。
きっとチヒロだって見るのに、それでもこの願いにしたを思い浮かべた
彼女も悩んで、それでもこの願いを書いたとしたら・・・
チヒロと話すを見る
視線に気が付いたのか、それともこちらをチラチラと見ていたのか
の視線とぶつかり、そしてがにっこりと笑った
万里にとって、最後の一歩を踏み出すには、それで充分だった。
彬 : 答えは出たかい?
万里 : はい。オレ、ちゃんと・・・抜けだしたいです
炎樹 : よく言った!!よぉっし!!それじゃ、俺たちがチヒロを足止めするからな?
彬 : でも彼の事だから、そんなに長くは足止めも出来ないよ、判るね?
万里 : 充分です。ちゃんっていう織り姫をかっさらって、
オレ天の川のその向こうまで逃げますから
炎樹 : 頼もしいなぁ!うんうん、よっしゃ!やるぞ!
彬 : うん、いい顔になったよ万里くん。それじゃ、行こう
彬達は踏み出した
炎樹は、万里の胸ポケットに短冊を返した。「続き、書いとけよ」と一言添えて。
: おかえりなさいって今度は炎樹も一緒?どうしたんですか?
炎樹 : いやーチヒロのロッカーから変な物音がして・・・
チヒロ: ?!・・・音?オレのロッカー・・・から?・・・
彬 : そう。無断で開ける事は出来ないだろう?本人を立ち会わせた方がいいと言う事になってね。
炎樹 : なんか、ヤバいもんでも持ってきたのか、チヒロ?
チヒロ: ・・・何もない・・ハズ・・ちょっと行ってくる!・・・
炎樹と彬がチヒロを連れて行く。
二人きりになった途端、万里はの手を取った。
その表情はいつものふざけた万里ではなかった
万里 : 早く。彬さん達が抜け出せる様に時間作ってくれたから
: え?あ、あの万里さん?
万里 : ・・・嫌?でも、ゴメンね、ちゃん。
オレ今はちゃんに嫌って言われても連れて行く覚悟しちゃったんだw
: は?ちょ、ちょっと万里さん?!
万里 : 走るから、荷物はこれだけね?
じゃ、ちょっと逃亡しますか。っよぃしょっと。ちゃんしっかり捕まってね
万里はを軽々と抱き上げ、お姫様抱っこのままゴージャスを出た
万里がどれ位走っただろう。
はずっと抱き上げられたままだったが、恥ずかしくて顔を埋めていた
ふと、万里の動きが止まり、は少し顔を上げた
: ここは・・・公園?
万里 : ゴメン、ちょっと・・・休憩・・・やっぱり・・酒飲んで走るのは・・きついわ
: ダメじゃないですか?!もう。言ってくれれば私だって一緒に走ります!
万里 : ・・・だーめ・・・
だってこうでもしないとちゃん大人しくオレに抱かれていないでしょ?
: (//////)な・・・何言ってるんですか・・・もう・・・そのベンチで休憩してください!
万里 : えー・・・だって下ろしたらちゃん逃げちゃいそうだもんw
万里の顔が近い
いつもより、声も近い。汗が滲む額も首筋もすぐ近くに見える。の顔も火照ってきそうだ
言っている事はいつもの軽い口調の万里なのに、表情はいつもと違って見える
万里 : そんなに見つめたら食べちゃうよ?ちゃん
: た、食べるって(//////)
・・・だーかーらぁ!一度下ろしてください。逃げませんから!!
万里 : ホントに?
: ホントです。
万里 : 短冊見せても?
: ?!!!見たんですか?!・・・・それじゃ、尚更逃げる意味がないでしょ。もう・・
万里 : 逃げたい?
: 意地悪な事、訊かないで下さい
拗ねて万里から視線を外すの頬に、キスが落ちた
不意打ちの万里の唇だった
万里 : 意地悪な事訊いたお詫びwこれじゃ許してくれないかなぁ?
: 下ろしたら許してあげます
万里 : んー、このままこうしててもいいんだけど・・・
両手が使えないって言うのはオニーサン不便だしなぁ
: どう不便なんですか、もう!
万里 : まぁた、ちゃんたら知ってるくせにぃ。
ま、いいや。あんまり意地悪したら嫌われちゃうし。あそこのベンチまで、我慢して?
ベンチにそのまま座ると、万里はそのまま一層強くを抱きしめた
いつも、チヒロがする、どこか子供が甘えるような強引さだった
: ま、万里さん?
万里 : ん?なーに?ちゃん
: どうしたんですか?なんだか・・・いつもとちょっと違うみたい
万里 : そ?オレホントはいつもこんな事思ってた、なんて言ったら?
: こんな事って・・・
万里 : ちゃんを抱きしめて、独り占めしたいっていつも考えてた
背中に回された万里の手がより一層力強くを抱いた
その力強さは痛さではなく、を全部包み込んでしまおうとする万里の思いだった
話すたび、お互いの声が耳元でするほどの近さ。
顔が見えないけれど多分万里は笑っていない
ホストの「臣万里」顔ではない、「家常祥行」としての顔なんだと思った途端、
は自分も首に回した手に、つい力をこめてしまった
万里 : いいの?そんなにギュゥッとされちゃったら、オレちゃんの事離さないよ?
: 短冊・・・読んだんですよね。
万里 : うん、ありがとう。でもオレってば、まだ短冊書いてないんだ
: そ、そうなんですか?
万里 : がっかり?
: んー・・ちょっとだけ。
万里 : じゃ、短冊に書こうと思った事、ちゃんにだけ教えてあげる
ふと万里の手から力が抜け、体が離れる。
しっかりと見えた万里の表情はやはり「家常祥行」の顔だった
いつものテーブルに来る、笑顔とは違う笑顔。どこまでも見透かしているような瞳
そして、大好きな人の笑顔。
万里 : ずっるいなぁー、ちゃん!そんな顔で見られたらさ、やっぱり短冊は後で・・
: ダメですー!だって私の見たでしょ?万里さんも教えてください!ね?
万里 : やっぱり?でも・・・やっぱダメだわ、もう時間切れ☆
: 時間切れって
の言葉は万里の唇で全て消された。
唇から、触れた手から、短冊に書けなかった想いが溢れてくるようだった
はそのまま万里に身を委ねていた。
七夕の夜の、そんなお話☆
『 たなばたづき Select 万里 』 ★ Write:梅桜 ★